これを見てみなさんはどう感じたでしょうか?少なからず全く同じ物だとは思わなかったと思います。この場所に腰方形筋がある。とざっくり知りたいのであればこのイラストでいいのかもしれませんが、実際に対象の方に触るとなれば筋肉の姿形が正確ではないとなると死活問題だと思います。ましてやこの腰方形筋、私も必ず触る筋肉ですし、腰痛の治療となれば腰方形筋を無視する人はいないと思います。
また腰方形筋の起始停止ですが、今私の手元にあるもので見比べてみると
カラー人体解剖学
起始:腸骨陵
停止:第12肋骨と腰椎の横突起
ニューロマスキュラー
起始:腸骨陵後部と腸腰人体
停止:第12肋骨の内側半分の下面、L1~L4の肋骨突起
クリニカルマッサージ
起始:腸骨陵、腸腰靱帯、下部腰椎の横突起
停止:第12肋骨と上部腰椎の横突起
基礎運動学
起始:腸骨陵、胸腰筋膜
停止:第12肋骨、腰椎横突起
PTOT解剖学
起始:腸骨陵と腸腰靱帯、腰椎肋骨突起
停止:第12肋骨、腰椎肋骨突起
とバラバラ、腰椎の部位肋骨突起を横突起と呼んでいいのか?もありますし、基礎運動学に関しては明らかな誤字もあります。(記載のまま引用しています)
L1~L4までに腰方形筋がつくのか?L5までついているのか?はたまた腸腰靱帯にもつくのか?となると腰方形筋を治療する際、手の持って行き方が全く変わってくるかと思います。
私が知っている腰方形筋は筋繊維が3層構造になっており、ほぼ垂直に走る腸肋線維、斜めに走る腸腰線維、同じく斜めに走る腰肋線維で腸腰線維と腰肋線維は交差しているものになります。ただこれすらも誤りなのかもしれないと思わせるぐらい解剖学書の表記というのはバラバラです。
このように解剖学書の起始停止やイラストでの表現はバラバラで正直どれが本当のことなのか見比べてしまうと余計にわからなくなってしまいます。なぜこのような相違がうまれてしまうのかですが「解剖学者の好み」で筋肉の起始停止や姿形は変わっています。
ここで大事な考え方はこの解剖学書は間違っていると思うのではなく、このどれもが正しい可能性があり、それを理解した上でどう臨床で用いていくかです。
自分の目的に応じて解剖学書を選ぶ
ざっくり知りたいだけなのであれば、自分にとって見やすい解剖学書で十分だと思います。なにも専門的で高価なものではなく、ライトな解剖学書も安くでありますし、学校に通われている人はそこで使う教科書の解剖学書で十分だと思います。ただ実際に対象の方を触るとなると話は別です。綺麗なイラストを売りにしている解剖学書もあったりしますが、正確に書かれていないのであれば、どれだけ見やすくても私はその解剖学書の価値は0だと思っています。
実際に触るという方は触診解剖の本を買ってください。筋肉の触り方はもちろんですが、神経・血管・靱帯など軟部組織の触り方が書かれたものです。また亡くなったご献体を元に書かれた解剖学書ではなく、生きている人間をベースに書かれた解剖学書にしてください。
ご献体は亡くなっているため体の組織が弛緩してしまっており、実際に人を触らないといけない場面では不向きです。
とは言えこんな落とし穴も
触らないといけない人は触診解剖の本を買ってください。と先ほど言いましたが、こんな落とし穴もあります。「生きている人間は個人差が大きい」です。
例えば触診解剖の本を買ったとして、そこに書かれている通りに神経を触りに行ったとしても、「あれ?これやんな?」となることがあるかと思います。それもそのはずで生きている人間の体は個人差が大きく、書かれてある位置から指先1本分ぐらいは平気でズレます。
指先1本分、大したズレには聞こえないかもしれませんが、されど指先1本分です。
このズレがあることをわかった上で、正確に触診出来るかがなにより大切になっていきます。それには実際にたくさんの人に触れて練習するしかありません。
個人的におすすめの本ですが、ポケットチューター体表からわかる人体解剖学という本があります。この本は差異があることをはじめから考慮して書かれているため、神経の位置の振れ幅や内臓の位置の振れ幅など事前に情報として知ることができます。
ぜひ3D解剖図と美術解剖学は見てほしい
最後にですが、より深く解剖学を学ぶために3D解剖図と美術解剖学は見てほしいです。3D解剖図は詳しく見るには課金しないといけませんが無料のアプリがたくさんありますのでダウンロードしていただいて、本などの平面だけでは気がつけなかった発見が必ずあります。
例えば腸腰筋、