こんにちは、まえだ治療院です。
今回は「食べ物消化実験」についてです。
人体実験というのは医学の歴史上、医学の発展のために不可欠です。
現在では
非人道的な人体実験というのは禁止されていますが、
過去にはさまざまなことが行われてきたことも
事実です。
1776年頃にイタリアのラザロ・スパランツァー二が、
「どのようにして食べ物は体の中で消化されるのだろう?」と実験をしました。
解剖学が盛んに行われていましたので、
「臓器」についてはわかる
しかし、
その臓器たちがどのような機能をもっているのか?
というのは、
生きた人間を解剖するわけにはいかないので、
分かっていませんでした。
ラザロは自分の体を実験台にして検証しました。
やり方は、
「食べ物を布や筒に入れ飲みこみ、しばらくしてから吐く」を繰り返すことでした。
布、筒は残っているが、
中身の食べ物は消えてなくなっている
その時に布に残った「液体状のなにか?」が
消化に重要な役割を果たしていると
ラザロは理解しました。
この「液体状のなにか?」は
みなさんもご存じの通りの「胃液」です。
のちにラザロも、
「食べ物は胃の中で胃液によって消化される」
と確信し、胃液は酸であることを突き止めました。
ラザロは自分の体を使って実験を行いましたが、
のちに
生きた人間を使って胃の消化の働きを確かめた人物が
います。
それはウィリアム・ボーモントです。
ボーモントはアメリカ合衆国の軍医でした。
ボーモントを一躍有名にし、
医学の進歩に貢献することになるある出来事が
1822年6月6日に起きます。
五大湖の中にある村で開かれた毛皮の取引所で
散弾銃の暴発が起こり至近距離にいた18歳のフランス系カナダ人、アレックス・サンマルタンの腹部に
当たってしまう事故がおこります。
近くにいたボーモントが呼ばれ、
治療をおこないますが、
「とても助かるとは思えない」
しかしサンマルタンは奇跡的に助かったのです。
ただ
胃壁の穴は完全にふさがらず一部開いたままとなり、
ボーモントは引き続き2年間治療を続けました。
お腹に空いた穴は時間の経過と共に、
まわりの組織によって不完全な蓋ができあがったが、
外から押すと開き胃の内部を観察することができました。
これは今でいう「胃瘻(いろう)」と
同じ状態ですが、この時には確立されていません。
1825年ボーモントはサンマルタンに金を支払い、
胃の消化機能に関する実験を
サンマルタンを体を使って始めることになります。
胃の穴に絹糸でつるした食物のかけらを挿入し、
数時間ごとに、食物を取り出し、
消化の進展を観察し、
サンマルタンの胃液を取り出し分析した。
研究の結果は1838年に発表され、
ボーモントが見出した事実としては、
胃液の分泌は食物摂取の結果として起こり、
機械的刺激によるのでないこと、
胃液には塩酸のほかに、
後にテオドール・シュワンによってペプシンと
命名されることになる化学物質の含まれることなどで
あった。
また直接胃に入れて消化される時間と、
口から食べ物を咀嚼してから胃に入って消化される
時間では違いがあり、
人の唾液には消化を助ける物質がある(のちのアミラーゼ、消化酵素)
こともこの時の実験で明らかになっています。
食べ物はよく噛んでから飲み込みましょうというのは、
もちろん飲み込みやすくするためではありますが、
この消化酵素と食べ物を混ぜ合わせるという
理由があります。
まえだ治療院 院長 前田諭志