こんにちは、まえだ治療院です。
みなさんは
「抗NMDA受容体脳炎」と言う病気を
ご存じでしょうか?
かつては「悪魔憑き」としてエクソシストが、
祈祷(悪魔払い)をしていた歴史があります。
が、そう言われるようになったのは最近の話です。
「今思えばあれは悪魔憑きではなく、
抗NMDA受容体脳炎だったのだろう」
と、あとからついたエピソードです。
映画「エクソシスト」のモデルになった人は
抗NMDA受容体脳炎だったのではないだろうか?と
最近では指摘されています。
日本では2017年に
「8年越しの花嫁 奇跡の実話」で
花嫁が抗NMDA受容体脳炎を発症し、
その後植物状態のまま、
8年越しに目覚めて花婿と結婚する
感動の映画があります。
抗NMDA受容体脳炎は、
昔からあった病気だったとは思いますが、
鑑別がしっかりと出来るようになったのは、
最近のことです。
ですので私も初めて臨床で出会った時には、
全くといっていいほど、抗NMDA受容体脳炎に
対する情報がありませんでした。
抗NMDA受容体脳炎がはじめて報告されたのは、
2007年に
ペンシルベニア大学の教授によって提唱されました。
また、興奮、幻覚、妄想など
いわゆる統合失調症のような
症状が急速に出現するのが、
抗NMDA受容体脳炎の特徴であるため、
統合失調症との鑑別が重要です。
どのように抗NMDA受容体脳炎になるのか?は
今のところ断定的にはわかっていません。
2007年に
抗NMDA受容体脳炎の疾患概念が確立されるまでは、「若年女性に好発する急性非ヘルペス性脳炎」
として報告されていたものに、
抗NMDA受容体脳炎が含まれていたのだろうと、
今では判明しています。
また今では、
若年(平均23歳)の男女1:9でなることが
わかっており、
女性の場合約60%で卵巣の奇形腫の合併が見られます。
奇形腫が見られる場合は抗体産生の大元になりますので
外科的な手術が優先されます。
原因ははっきりとしていませんが、
免疫制御剤の治療により、
約80%は2年でその後良好であることが多いと
言われています。
抗NMDA受容体脳炎の徴候や症状は、
人により違いはありますが、
症状の出方には一定の順序を辿るといわれています。
1、前駆症状として非特異性なウイルス様症状
(発熱・頭痛など)
2、精神障害、統合失調症に似た症状
(幻覚・希死念慮)
3、記憶障害、特に前向性健忘
4、ジスキネジアと発作
5、低い覚醒レベル(GCS)
6、低換気/呼吸制御
7、自律神経障害
(不整脈、徐脈、高血圧、発汗過多、唾液分泌亢進)
が見られます。
ここからは、私の実体験ですが、
実際に、
20代の抗NMDA受容体脳炎の人と
お会いする機会がありました。
はじめて出会った時は、その人は
クレヨンで画用紙に絵を描いていました。
ただ絵は書き殴るような印象、
「お花を書いてるの、お花が好きなの」と
その人の話し方は
3歳~5歳ぐらいの印象を受けるような人でした。
その人は私に時折ほほえみながら、
「●●ね~5歳になったんだよ~。まだ子供なんだよ~」と話し
私も見守るような形でいました。
「これが抗NMDA受容体脳炎の症状なのだろうか?」
と思いながらしばらくいると、
急にその人は、
すさまじい速さでクレヨンを動かし
書き殴りだしました。
紙から机にはみ出すぐらい
さすがに様子がおかしいと
「なにかの発作では?」と驚き、
制止すると
その人はクレヨンを放り投げ
「あ~だるい、お前なんだよ!」
「うぜーんだよ!!!こ●すぞコラー!!!!」
とそのまま暴れながら暴言を吐き続けて
つばを廊下に吐きながら、
部屋に戻っていくことになるのですが、
さっきまでの子供みたいなのはなんだったのか?
それよりあの変貌ぶりは?
どっちが本当の姿なのかわからないぐらい
私は困惑したのを覚えています。
その当時
「抗NMDA受容体脳炎」の情報はあまりにも少なく、
「卵巣腫瘍を併発する若い女性がなる脳炎」
しか情報がなかったぐらいでした。
ただ最近になり、情報が更新されていくことで、
あの時起きたことに納得がいきます。
早急に
抗NMDA受容体脳炎の解明と革新的な治療法が
開発されることを、切に願うばかりです。
まえだ治療院 院長 前田諭志